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ChatGPTやGoogleのAI検索で自社を表示させたいと考えたとき、
「ユーザーはどんなキーワードで検索するだろう?」
と考えるのは自然です。
たとえば勤怠管理サービスなら、
「勤怠管理システム おすすめ」
「勤怠管理システム 比較」
といった検索を想定し、それに合ったページを作る。
これは従来のSEOでは基本的な考え方です。
ただ、AI検索では少し事情が違います。
AIは、ユーザーから受け取った質問をそのまま1回検索するだけではなく、複数の関連テーマに広げて情報を探すことがあります。
その仕組みの一つが「Query Fan-out(クエリ・ファンアウト)」です。
AIOを考えるうえで、この仕組みは知っておいて損はありません。
Query Fan-outとは、一つの質問から複数の関連テーマへ検索を広げ、集めた情報をもとにAIが回答を作る仕組みです。
Googleも、AI OverviewsやAI Modeにおいて、質問を複数のサブトピックに分けて検索する「Query Fan-out」の仕組みを利用する場合があることを公式に説明しています。
たとえば、
「中小企業におすすめの勤怠管理システムは?」
と質問したとします。
私たちから見ると一つの質問ですが、AIが回答を作る過程では、
・どんなサービスがあるか
・料金はいくらか
・中小企業に向いているか
・どんな機能があるか
・他社とどう違うか
・評判はどうか
といった周辺情報まで探す可能性があります。
つまり、ユーザーが入力した質問と、AIが裏側で探している情報は必ずしも同じではないということです。
AI検索分析サービスを提供するPeec AIは、ChatGPT、Perplexity、Grokで観測された約500万件のQuery Fan-outを分析しています。
その調査では、AIが元の質問には含まれていなかった言葉を検索時に追加するケースが数多く確認されました。
ChatGPTでは、たとえば、
「best」
「top」
「comparison」
「reviews」
「features」
といった言葉が追加される傾向が報告されています。
ユーザー自身は「比較してほしい」と書いていなくても、AI側が比較情報やレビュー、機能について追加で調べている場合があるわけです。
もちろん、これは特定期間に観測されたデータです。
「ChatGPTは必ずこの検索方法を使う」という意味ではありません。使われるモデルや質問の内容、検索機能の挙動によって結果は変わります。
それでも、AI検索を従来と同じように、
「入力されたキーワードに合うページを作ればいい」
とだけ考えるのは少し危険です。
企業側から考えると、この違いは意外と大きな意味を持ちます。
たとえばA社とB社という二つの法人向けサービスがあるとします。
A社のWebサイトには、
・サービス概要
・主な特徴
・問い合わせフォーム
しかありません。
一方のB社には、それに加えて、
・料金
・対象となる企業
・導入事例
・導入までの期間
・セキュリティ
・他サービスとの違い
・よくある質問
などが掲載されています。
もしAIが、
「どちらが中小企業に向いているか」
「料金はどう違うか」
「安心して導入できるか」
まで調べながら回答を作るのであれば、B社の方が判断に使える情報は多くなります。
ここで重要なのは、とにかく文章を増やせばよいという話ではないことです。
必要なのは、顧客が比較・検討するときに知りたい情報を、Web上で明確に確認できる状態にすることです。
ここで一つ注意があります。
「AIが複数の検索をするなら、それぞれに対応した記事を大量に作ればいいのでは?」
と考えたくなるかもしれません。
これはおすすめできません。
Googleは生成AI検索についても、基本的にはユーザーにとって有用で、信頼でき、独自性のあるコンテンツを提供するという従来の考え方を重視しています。
想定される検索パターンごとに似たページを大量に作ることが、AIO対策になるわけではありません。
つまり、
「AIがこう検索しそうだから、この検索用ページを100個作ろう」
という話ではないということです。
Query Fan-outから考えるべきなのは、自社の顧客が商品やサービスを選ぶために必要な情報が、本当に揃っているかです。
業種によって必要な情報は異なりますが、企業サイトで確認しておきたいものとして、たとえば次の5つがあります。
1. 料金・利用条件
価格帯、料金プラン、対応地域、契約条件などです。
「良さそうだけれど、結局いくらなのか分からない」という状態では、ユーザーが比較しにくいだけでなく、AIが回答を作る際にも使える材料が限られます。
すべての価格を公開できない場合でも、
「どのような条件で料金が決まるのか」
まで説明できると、情報としての価値は高まります。
2. 向いている企業・ユーザー
どんな会社や人に向いているサービスなのか。
企業規模、業種、用途、抱えている課題などが明確になっていると、AIが質問との関連性を判断するための材料も増えます。
「幅広い企業に対応しています」だけではなく、具体的な利用シーンを示すことが重要です。
3. 実績・導入事例
どのような企業が利用しているのか、どんな課題に使われているのか。
単に「多数の導入実績があります」と書くだけではなく、
「どんな課題があり、どのように使われたのか」
まで分かる方が、比較の材料として使いやすくなります。
4. 比較・選び方
競合との違いだけでなく、
「こういう場合はこちらが向いている」
「この条件を重視するなら、このタイプを選ぶ」
といった判断軸を示しておくことも重要です。
自社を一方的に良く見せる比較ではなく、ユーザーが選ぶための材料を提供することがポイントです。
5. よくある疑問への回答
導入期間、サポート、セキュリティ、解約条件、対応範囲などです。
営業現場で何度も聞かれている質問は、Web上でも重要な情報である可能性があります。
実際の顧客からよく聞かれることを整理してみると、サイトに不足している情報が見つかることもあります。
Query Fan-outという話を聞くと、
「これからはSEOではなくAIOなのか」
と思うかもしれません。
ただ、ここも少し違います。
GoogleはAI OverviewsやAI Modeについても、従来のSEOの基本的な考え方が引き続き有効であり、AI機能に表示されるためだけの特別な追加要件はないと説明しています。
つまり、
・クロールできる
・インデックスされる
・重要な情報がテキストで確認できる
・サイト内の情報が整理されている
・ユーザーにとって役立つ情報がある
といった基本は変わりません。
そのうえでAI検索では、「検索順位」だけではなく、「どんな質問で自社が言及・推薦・引用されるか」も見る必要が出てきたと考える方が分かりやすいでしょう。
Query Fan-outを予想するより、実際のAI回答を見る
Query Fan-outの仕組みを理解することは大切ですが、企業がAIの内部検索をすべて予測する必要はありません。
実務では、それよりも、
自社の顧客が実際にしそうな質問をAIに聞いたとき、どんな回答になるのか
を確認する方が重要です。
たとえば、
「おすすめの○○会社は?」
「A社とB社の違いは?」
「中小企業に向いている○○は?」
「○○を選ぶときに何を比較すればいい?」
「○○に強い会社は?」
といった質問です。
そして見るべきなのは、自社が出たかどうかだけではありません。
競合はどんな質問で出ているのか。
どんな理由でおすすめされているのか。
どのWebページが情報源として使われているのか。
競合にはあって、自社にはない情報は何か。
ここまで確認すると、初めて、「では、自社サイトの何を改善すればよいのか」が見えてきます。
Query Fan-outによって、AI検索では一つの質問から複数のテーマについて情報が集められることがあります。
そのためAIOでは、一つのキーワードに対応したページを作るだけではなく、顧客が比較・検討するときに必要な情報を、Web上にきちんと用意しておくことが重要になります。
ただし、AI向けのページを大量に作る必要はありません。
まず確認したいのは、実際のAI回答で、自社と競合がどのように扱われているか。
そして、その差がどこから生まれているのか。
Query Fan-outを理解すること自体がゴールではありません。
AIがどのような情報を探しているのかを理解し、自社サイトに足りない判断材料を見つける。
そこからAIO対策は始まります。
参考資料
・Google Search Central「AI features and your website」
・Google Search Central「Google's Guide to Optimizing for Generative AI Features on Google Search」
・Peec AI「Patterns we see in ChatGPT query fanouts」